実際の通報事例を、法令・社内規程に照らして「何条に触れるか」まで踏み込んで読み解く連載。第1回は、多くの企業で起きる「公の場での叱責」を取り上げます。事例 → 法令照合 → リスク判定 → 改善提案の4ステップで整理します。

今回の通報事例

「上司が、フロア全員のいる場で特定の部下を長時間叱責している。本人は精神的に参っている様子だが、上司は”指導の範囲”と主張している」——匿名通報(対象部署:営業部)

1
CASE ── 事例

何が起きているか

公開の場での長時間叱責。業務上の指導という体裁だが、場所・時間・頻度・対象の限定性から、指導の相当性を超えている疑いがある。まずは事実(回数・時間・目撃者)を通報内容から可能な限り具体化する。

2
LAW ── 法令照合

関係法令の特定

労働施策総合推進法 第30条の2(パワーハラスメント防止措置義務)。「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」「就業環境を害する」の3要件に照らして評価する。公の場での叱責は、態様によって3要件を満たしうる。

3
RISK ── リスク判定

リスクレベルの判定

継続性・本人の心身への影響が認められるため、当該事案は レベル B 要対応 と判定。放置すれば安全配慮義務違反・労災認定リスクに発展しうる。就業規則のハラスメント防止規程にも抵触の疑い。

4
ACTION ── 改善提案

企業がとるべき対応

①事実確認(目撃者ヒアリング・特定リスク配慮)②上司への注意・指導方法の是正③被害者のケアと配置配慮④再発防止のための管理職研修。対応の記録化までを一連で行う。

リスクレベルの読み方

本連載では、通報事例を4段階のリスクレベルで示します。数字ではなく”対応の緊急度”を共有するための指標です。

A:重大・即時対応
B:要対応
C:経過観察
D:情報共有のみ

リスクアセスメントレポート
通報区分ハラスメント(叱責)
リスクレベルレベル B
関係法令労働施策総合推進法 第30条の2
社内規程就業規則 第◯条 抵触の疑い
監修弁護士高岸佳子
監修社労士飯塚篤司
図:本事例を当社様式のリスクアセスメントレポートに落とし込んだ例。

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高岸 佳子

本記事監修
高岸 佳子 / 飯塚 篤司
弁護士(日本法)/ 社会保険労務士
弁護士が法令該当性を、社労士が労務実務との整合をクロスチェック。法的リスクと現場運用のギャップを同時に評価する。