「匿名の通報は、調査のしようがない」——通報窓口の運用でもっとも多い誤解のひとつです。結論から言えば、匿名でも調査は可能です。ただし”特定につながる情報の扱い”には、いくつかの実務上の勘所があります。よくいただく質問に、弁護士・社労士がお答えします。
いいえ、匿名通報でも調査は可能です。多くの企業が「通報者が誰か分からないと動けない」と考えがちですが、実際には通報内容そのものを起点に事実確認を進めるのが原則です。通報者の特定を前提にした調査設計こそ、むしろ避けるべきです。
重要なのは、調査の過程で通報者が推測されない配慮(対象部署を広めに設定する、ヒアリング順序を工夫する等)を最初に決めておくことです。
その懸念はもっともです。中小規模ほど、情報の範囲が狭く特定リスクが高まります。実務では「特定リスク評価」を調査着手前に必ず行うことをおすすめしています。誰にヒアリングすれば通報者が絞り込まれてしまうかを事前に洗い出し、リスクが高い場合は外部窓口経由で匿名性を保ったまま確認する方法をとります。
公益通報者保護法上も、通報者の探索や不利益取扱いは禁止されています。特定を”しない”設計は、コンプライアンス上の要請でもあります。
件数そのものに絶対的な正解はありませんが、従業員規模に対して通報が極端に少ない場合はむしろ要注意です。「通報がない=問題がない」ではなく、「窓口が信頼されていない・知られていない」可能性を疑う指標として捉えてください。
大切なのは件数ではなく、1件ごとの内容をリスク評価できているかです。
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匿名通報を「扱えないもの」ではなく「特定リスクを設計で管理するもの」と捉え直すこと。それが、通報体制を実効性のある仕組みに変える第一歩です。